現在の歯科医院に勤めるまでの経緯を教えてください
1989年に松本歯科大学を卒業しました。その後、医師として6年間勤務し1999年にスマイル矯正歯科に勤務。2001年に米国の歯のかみ合わせ認定制度「USA OBI」LEVEL4(最高ランク)を取得しました。2013年から名駅歯科クリニック・矯正歯科に 勤務しています。
先生が患者さんに喜んでもらっている点を教えてください
しっかり咀嚼できる機能性と審美性をあわせもつ、理想的な口腔環境を目指す治療を行っている点だと思います。
私がインプラント治療で目指すのは、単に無くした歯を補う治療ではありません。必要に応じて、歯のかみ合わせを整えて、長く健康的な人生を送ることができる口腔環境を作ることを目指しています。
そのため、患者さんの歯の状態によっては、インプラントと歯列矯正を組み合わせた総合的な治療を行うこともあります。
見た目を改善だけでなく、患者さんの健康寿命を少しでも長くできるようなインプラント治療をしたいと考えています。
インプラント治療について教えてください。
インプラントは、無くした歯の部分に人工歯をとりつけるための治療です。
インプラントの治療法はいくつかあるので、ここでは一般的なご説明をします。
欠損した歯の土台となる骨に歯茎を貫通させてインプラントを埋入し、土台の骨が生着するまで安定期間をもうけて6週間ほど待ちます。その後、インプラントが骨にしっかり生着したことを確認して、ボルトの先にセラミックなどの人口歯を取り付けます。
インプラントを埋入する土台となる骨の量が十分にあり、骨の強度に問題なければ、すぐにインプラント治療ができます。しかしそうでない場合は、インプラントを埋入するのに十分な骨を確保するために、骨を移植するなど骨を増やす骨造成の処置が必要になることもあります。
今は、骨が少なくても治療できるインプラントが開発されたので、骨造成が不要になるケースもあります。
1回法と2回法の違い
インプラント治療には、「1回法」と「2回法」という治療法があります。
「1回法」では、土台の骨に埋入したインプラントの上の先部分を歯茎から出した状態でインプラントが骨に生着させます。生着後、露出しているインプラントの上部に人工歯を取り付けます。
「2回法」では、埋入したインプラントを歯茎の中に完全に埋めて蓋をします。インプラントが骨に生着したところで、歯茎を切る手術をしてインプラントの上部に歯を取り付ける処置をします。
これまでは、2回法の方が感染のリスクが低く安全と考えられ一般的によく行われる治療法でした。しかし、インプラントの研究開発が進み、今では1回法でも安全に配慮した治療ができるようになり、1回法の治療を積極的に行うクリニックが増えています。
当院も、患者さんの心身のストレスが少なく、手術当日に仮歯まで付けられる「1回法」の治療を主に行っています。
「1回法」のメリット
・麻酔手術が1回で済み、患者さんのストレスや不安が少ない。
・手術当日に仮歯まで付けられるので審美面で優れる。
「1回法」のデメリット
・インプラントが骨に生着前に硬いものを噛むなど強い力が加わると、インプラントがはずれる心配がある。
「2回法」のメリット
・歯への負担が少なく成功率が高い。
・インプラントが露出していないのでインプラントが外れる心配が少ない
「2回法」のデメリット
・麻酔手術を2回しなければならない。
・初回の手術時に仮歯を付けられないので、見た目が気になる。
費用の比較
クリニックによって料金はまちまちなので一概には比較できませんが、「1回法」と「2回法」を両方行っているクリニックでは、「1回法」は高い技術が求められため、費用も高い傾向にあります。
オールオン4について
オールオン4について通常のインプラント治療では、上下それぞれ8本。合計16本をインプラントします。オールオン4なら上・下各4本のインプラントですべての歯を人工歯にできます。また、手術の当日に固定式の仮歯まで装着できます。
しかし、オールオン4の治療を行うには、専門知識と技術を有するドクターとスタッフのチームで治療に当たらなければならないので、一般的なクリニックで行うには難しい治療法といえます。
骨の造成について
インプラントを埋入する骨の量が少ない、又は十分な硬さがない場合には、自家骨・他家骨・人工骨等を補う骨造成の処置を行うことがあります。
骨が足りなくても使えるインプラントも開発されたので、最近では、骨の量が少なくても、必ずしも骨造成を行わないケースも増えてきました。
フラップレス手術について
従来のインプラントでは、歯茎を切開して実際に骨を確認しながら行うフラップ手術が一般的でした。しかし、最近では切開不要のフラップレス手術を行うクリニックが増えています。
フラップレス手術をする前に、CT検査等により骨量や骨の形状・厚みなどを測定して問題がないか医師の確認が必要です。
フラップレス手術は、歯茎を切開せず測定データを読み込ませたソフトが指示するシミュレーションに従ってインプラントを埋入します。フラップレス手術は、手術時間が短く出血や痛みも比較的少ないので、患者さんのストレスを抑えられる治療法です。
先端技術で計測されたデータと高度なシミュレーション結果を元に行うフラップレス手術は、歯茎を切開せずに正確にインプラントを埋入できます。しかし稀にですが、手術時にデータ上と異なる複雑な骨の状態が確認されることがあります。その時は、急遽フラップ手術に切り替えることもあるので、フラップレス手術とフラップ手術の両方の治療経験が豊富なクリニックを選択することをおすすめします。
インプラント治療が必要な人はどのような人でしょうか?
インプラントは、無くした歯を人工歯で補う治療です。
入れ歯やブリッジではなくインプラントの方が良いと言える理由はいくつかあります。
- 食事が快適になる
- 自分の歯で食べる喜びを取り戻せる
- 残っている歯を守る効果が高い
インプラントの歯は、入れ歯やブリッジよりしっかり安定しているので、食べる時に入れ歯などのような不快感が少ないのが特徴です。
また、自分の歯で食べている時に近い歯ごたえや噛みしめることで得られる美味しさを味えます。
さらに、ブリッジのように残っている自分の歯に負担をかけにくいため、残りの歯を温存させる効果が高いといわれています。
インプラント治療にかかる費用について教えてください
インプラントしてセラミックの歯を入れる場合の料金は、1本当たり40万円程度が相場のようです。
料金には、クリニックにより異なる人件費やクリニックの運営費、設備費、技術料など様々なコストが反映されるので、一概にいくらが妥当とは言い切れないのが現状です。
また、インプラント自体の価格もメーカーにより差があります。症例数が多く信頼性が高いメジャーな企業のインプラントは金額が高くなります。
費用や治療プランについて疑問点や心配なことは、クリニックに行って納得できるまで相談していただきたいです。
インプラントの寿命とアフターケアについて教えてください
インプラントした歯は、残念ながら一生もつとはいえません。
インプラント治療の成功基準は、インプラント後の歯の残存期間10年とされています。
ところで、現在インプラントした歯の10年後の残存率は98%と言わているので、ほとんどのケースで10年間はインプラントの歯が保たれているといえます。
さらに、20年後も30年後も歯を残すためには、クリニックのアフターケアをしっかり受けることが必要です。治療後も2,3か月に一度は定期に診療を受けていただき、不具合などがないかチェックを受けることが大切です。
同時に本人のセルフケアもしっかり行っていただかなければなりません。インプラントの歯は人工物なので、天然の歯が持っている生体防御機能がありません。セルフケアが不十分だと、周囲炎を起こして、重症化するとインプラントの歯を失う可能性もあります。
インプラントメーカーの違いとは
世界でインプラントメーカーは100社以上あるといわれ、日本でも約30社のインプラントが治療に用いられています。
その中で、品質・信頼性において、多くのクリニックから高い評価を得ているメーカーのインプラントが確かにあります。例として3社ほどご紹介します。
- ストローマン社
- ノーベル・バイオケア社
- アストラテックインプラントシステム社
これらのメジャーなメーカーは、長い研究成果に裏打ちされた品質の良いインプラントを提供していることで知られています。
メジャーなインプラントは、汎用性が高く治療で何らかのトラブルが起きても、代替えや交換が容易な点も使う側として安心感があります。
しかし、質の良いインプラントは治療に使うと費用が高くなります。
でも、患者さんの健康寿命にも影響するインプラントの品質は、良い口腔環境を作る治療を考える上で重視したい要素です。
当クリニックでは、患者さんの予算の範囲内で出来るだけ良い質のインプラントを使う治療ができるように、患者さんの話をしっかり伺いながら治療プランを作成しています。
インプラントで大事な事
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」。厚生労働省は「8020(ハチマルニイマル)運動」として、生涯自分の歯で食べることの大切さを訴えています。
その訴えの通り、最も大切なことは自分の歯を失わないことです。
歯を失わないためには、毎日の歯磨きなどのセルフケアと、定期的なクリニックでのメンテンナンスが欠かせません。
しかし、どれだけセルフケアやメンテナンスをしっかり行っても、一度失った歯は二度と戻ってきません。
インプラントをすれば、まるで自分の歯のように食べ物を噛みしめ、食事の美味しさを味わうことができます。
インプラントに不安を感じたり、費用が心配な人もいるかもしれません。是非、クリニックに来て相談をしていただき、不安を解消してほしいと思います。
※本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が具体的なクリニックや施術や商品等を推奨しているものではございません。